無意識に歯を食いしばる原因と悪影響を解説
- 2024/05/01
- 一般
食いしばりと歯ぎしり
無意識に歯を食いしばることを「クレンチング症候群」といいます。“食いしばる”という表現からもわかるように、上下の歯列でしっかり噛むことを指します。それだけを聞くと何ら問題はないように感じるかもしれません。それなら上下の歯をギリギリと擦り合わせる「歯ぎしり」の方が害も大きそうなものです。
実際、歯ぎしりも歯や顎の関節に与える悪影響は大きいのですが、クレンチング症候群もそれに匹敵するくらい有害といえます。なぜなら、歯を食いしばることは、歯や顎の骨に100kgくらいの圧力がかかる場合もあるからです。つまり、歯ぎしりとクレンチング症候群は、性質の異なる悪習癖ですが、どちらも歯や歯周組織を破壊しかねないものである点は共通しているのです。
食いしばりの原因ってなに?
無意識に歯を食いしばる原因としては、主に「ストレス」と「かみ合わせの異常」の2つが挙げられます。
原因1:ストレス(精神的要因)
歯を食いしばる習慣がある方は、どんな場面でその症状が現れるのか思い返してみましょう。おそらく、勉強や仕事などで強いストレスがかかった時に、上下の歯列で強く食いしばっていることでしょう。強いストレスを受けている状態は、交感神経が優位になっていることから、口腔周囲の筋肉も緊張しやすくなり、歯を食いしばってしまうのです。また、歯を食いしばることでストレスを緩和しているという考え方もあります。
原因2:かみ合わせの異常(物理的要因)
正常なかみ合わせは、歯列全体で均等に噛むことができます。それが部分的に高くなったり、低くなったりしていると、かみ合わせが安定せず、特定の歯にだけ大きな負担がかかることになります。そうした不安定な状態だと、脳が噛む力を強めようとして食いしばりが起こる場合もあるのです。
食いしばりによる悪影響はある?
私たちの歯は本来、食べ物を介在させない形で噛むことを想定していません。歯の表面は、人体で最も硬いエナメル質で覆われているものの、硬いもの同士で噛み合ったらお互いが破損してしまいます。現実問題として、食いしばりでは体重の2倍程度の負荷がかかることから、歯やその周りの組織に深刻な悪影響をもたらすのです。具体的には、以下の4つの悪影響にご注意ください。
悪影響1:歯の損傷
食いしばりによる悪影響で最もわかりやすいのは、歯の損傷です。歯が欠けたり、割れたりすることから、肉眼的にも自覚しやすいかと思います。ただし、歯根が折れた場合は、レントゲンを撮影しなければ、正確な状態を把握できませんので、その点はご注意ください。
悪影響2:歯の神経に炎症が生じる
歯の中心部には、歯髄(しずい)と呼ばれる神経が分布しています。食いしばりによって歯に過剰な負荷がかかると、細菌感染とは関係のない炎症反応が起こる場合があります。これを単純性歯髄炎(たんじゅんせいしずいえん)といいます。非感染性の歯髄炎なので、食いしばりという悪習癖がなくなれば、自然に治る可能性がありますが、その状態を放置していると歯の神経を抜く処置と根管治療が必要となります。
悪影響3:歯ぐき・顎骨に炎症が生じる
歯は口腔内に独立して存在しているのではなく、歯ぐきや歯槽骨(しそうこつ)、歯根膜(しこんまく)に支えられています。ですから、食いしばりで歯に強い負荷がかかると、その支えとなっている歯周組織にもダメージが蓄積していくのです。その結果、歯ぐきや歯槽骨、歯根膜に炎症が生じることになります。とくに噛んだ時の圧力を緩和する役割を担っている歯根膜は、食いしばりによって歯根膜炎(しこんまくえん)を発症しやすくなっているため要注意です。
悪影響4:顎関節症になる
そしゃく機能の支点となるのは、顎関節です。食いしばりによって歯や歯ぐき、顎の骨に大きな負担がかかれば、支点である顎関節にも多大な悪影響が及ぶことも容易に想像できるかと思います。食いしばりをする習慣があって、顎関節の痛みや腫れ、口の開け閉めがしにくいなどの症状が認められる場合は、顎関節症を発症している可能性が高いです。その影響は、首や肩、頭にまで広がって、首のこりや肩こり、頭痛を誘発することもありますので十分にご注意ください。
まとめ
今回は、無意識に歯を食いしばる原因と悪影響について解説をしました。歯を食いしばる悪習癖は、強いストレスを受けたり、かみ合わせに異常があったりする場合に起こりやすいです。そのままの状態で放置していると、歯が欠ける、歯根が折れる、歯の神経や顎骨に炎症が起こる、といった悪影響が生じるため、できるだけ早く改善するように努めましょう。食いしばりや歯ぎしりは、歯科医院で治療を受けることができます。