上顎が出てる原因は?放置するリスクと治療方法も解説
- 2024/12/01
- 矯正
上顎前突とその原因について
上顎が前に出ている症状を専門的には「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」といいます。矯正歯科では診断名として使われる名称であり、れっきとした歯並び・かみ合わせの異常であることに間違いはありません。
上顎前突の原因は?
上顎前突の原因は、先天的要因と後天的要因の2つに大きく分けられます。
- ●先天的要因
先天的要因とは、生まれる前から決まっているもので、いわゆる“遺伝”を指します。最もイメージしやすいのは、下の顎に対して、上の顎が大きいという骨格的な特徴です。これは遺伝によって継承することが多く、家族内でも同様の症状が見られます。それ以外にも歯の大きさや数、口腔全体の構造などもある程度、遺伝子によって決まっていることから、上顎前突を構成する遺伝的要因もそれなりに大きいといえるでしょう。
- ●後天的要因
後天的要因とは、生まれた後に決まるもので、上顎前突の場合は口呼吸・指しゃぶり・舌を前に突き出す癖などが挙げられます。こうした口腔習癖があると、舌が正常な位置から外れたり、前歯に不要な圧力が加わったりすることで出っ歯の症状が誘発されるのです。とくに幼少期の口呼吸と低位舌(舌が正常よりも低い位置にある症状)は、骨格的な上顎前突を引き起こしやすいため十分な注意が必要です。
上顎前突のリスクとは
上顎が前方に出ている症状を放置していると、次に挙げるようなリスクが生じます。
リスク1:顔貌への悪影響
上顎前突は、横顔の美しさの指標となるEラインを悪くします。ケースによっては「口ゴボ」と呼ばれる症状も見られることから、顔貌に与える悪影響は比較的大きいといえるでしょう。出っ歯や口ゴボといった症状が自己意識にマイナスな影響を与えてしまい、人とのコミュニケーションがとりにくくなることもあります。その結果、いろいろなことに対して消極的になってしまう方も少なくありません。
リスク2:健康への悪影響
上顎前突では、前歯で食べ物を噛み切ることが難しく、奥歯に過剰な負担がかかりがちです。そのため奥歯の寿命が短くなったり、顎の関節に痛みや腫れなどが現れたりします。そしゃくが不十分な状態で食べ物を飲み込むと、胃や腸といった消化管にも必要以上の負担をかけることになるでしょう。
リスク3:精神面への悪影響
出っ歯や口ゴボの症状がある方は、自己評価が下がりがちです。自分の見た目に対する不安感があるため、常に口元を隠したり、人前で笑わないよう努めたりするなど、日常的に強いストレスを受けているという方も珍しくないのです。それは毎日の生活だけでなく、学業や仕事、人間関係にまで悪影響を及ぼしかねないため、十分な注意が必要といえます。
上顎前突の治療方法
上顎前突を改善する方法は、小児期と成人期で異なります。
小児期の上顎前突の治療法
小児期は、まだ顎の骨が発育途上にあるため、骨格から上顎前突を改善することが可能です。具体的には、ヘッドギアと呼ばれる装置を使って、上顎の成長を抑制します。指しゃぶりや口呼吸が原因で上顎前突となっている場合も小児期であれば、MFT(口腔筋機能療法)のようなトレーニングである程度の改善が見込めます。いずれのケースも仕上げとして2期治療に当たる歯列矯正が必要となることでしょう。
成人期の上顎前突の治療法
- ●軽度
軽度の上顎前突は、前方に傾いている前歯を正常な位置にまで戻すことで出っ歯の症状を改善できます。ワイヤー矯正とマウスピース型矯正のどちらでも対応可能です。 - ●中等度
中等度の上顎前突は、多くのケースで抜歯が必要となります。複数本の歯を抜いてスペースを作り出し、前歯を後方に下げる必要があるからです。前歯の後方移動の際には、顎の骨にネジを埋め込む矯正用アンカースクリューを併用することが多く、三次元的な歯の移動が得意なワイヤー矯正が適しているといえるでしょう。もちろん、マウスピース型矯正で対応できる中等度の上顎前突も多々あります。 - ●重度
重度の上顎前突は、骨格的な異常が大きいことから、外科矯正を併用します。外科手術の前後には、歯列矯正が必要となります。
まとめ
今回は、上顎が出ている原因や放置するリスク、治療する方法などを解説しました。上顎前突の原因は、先天的要因と後天的要因の2つに分けられ、後者に関しては予防的に対処することも可能といえます。もうすでに上顎前突になってしまっている場合は、小児矯正や成人矯正で治療することになります。出っ歯・口ゴボ・上顎前突の症状を放置しているとさまざまなリスクを伴うことになるため、可能な限り早く、歯科での治療を受けることをおすすめします。